崔承喜は世界ツアーで「アリラン」を発表したのだろうか? 当然だ。 サンフランシスコ、ロサンゼルス、そしてニューヨーク公演のプログラムにも「アリラン」が演奏リストに含まれていた。
「アリラン」は韓国を代表する民謡である。 スコットランドの「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne)」、アイルランドの「ロンドンデリー・エア(Londonderry Aire)」、フランスの「アヴィニョンの橋の上で(Sur le pont d'Avignon)」、ドイツの「ローレライ(Die Lorelei)」、日本の「さくらさくら」などに該当する。

韓国と朝鮮は、両国が分かれてから70余年が経った現在でも、皆が「アリラン」を最も愛する民謡として大切にし、オリンピックや世界選手権に単一チームで出場する際には、両国の国歌の代わりに「アリラン」を演奏することで合意したこともある。
「アリラン」は単一の曲ではなく、約60種類のメロディが2千種以上に変奏される民謡である。 その中でも「京畿道アリラン」や「旌善アリラン」、「密陽アリラン」などが最も広く知られている。 学者たちは「アリラン」が高麗末や朝鮮初、すなわち15世紀まで起源が遡るという研究を発表している。
「伝統の現代化」という手法で韓国の伝統舞踊を朝鮮舞踊として様式化した崔承喜が、久しぶりに世界ツアーで「アリラン」を発表したのは当然のことだっただろう。 舞踊の伴奏音楽は「アリラン」であることは間違いなく、その中でも「京畿道アリラン」を編曲して使用したのだろう。

崔承喜は、米国での初公演であったサンフランシスコ公演から「アリラン」を上演した。 在米日本人新聞『日米新聞』(1938年1月22日)の日本語版(3面)は、崔承喜の発表曲目の中で第2部の4演目として「アリラン」を報じ、英語版(2面)ではそれを「Ariran」と表記した。 日本語表記の「アリラン」は韓国語で「아리랑(Arirang)」と「아리란(Ariran)」の二つに発音できるため、誤訳とは言えないが、英語版の記者がこれを「Ariran』と訳したのは、彼が日本人であり、朝鮮の民謡「아리랑(Arirang)」を知らなかったという意味である。
崔承喜はLA公演でも「アリラン」を上演した。 『加州每日新聞(1938年2月2日)』の英語版(5面)は、12個の演目を報じ、その第4演目として「朝鮮の恋人たちの別れ(Korean Sweetheart's Farewell)」を掲載した。 「アリラン」という名前を使わなかったのは、馴染みのない固有名詞の代わりに作品の内容を記述しようとしたからだろう。 「別れ」という言葉を使ったのは、「私を捨てて去るあなたは…」という歌詞が理由だろう。 在美朝鮮人新聞『新韓民報』(2月10日、2面)は、この公演の第1部4連目を「アリラン舞(아리랑춤)」と表記し、「恋人と別れる舞」と説明した。

1938年2月20日に開催されたニューヨークのギルド劇場の公演でも「アリラン」が上演された。 1938年2月21日の『ニューヨーク・タイムズ』と2月22日の『東京朝日新聞(2面)』は、崔承喜が「殊に得意の朝鮮舞踊「半島の放浪者」、「アリラン物語」、及ひ「田舍娘と汽車」は好評だつた」と報じた。 ニューヨーク公演のレパートリーに「アリラン」が含まれている事実は、朝鮮で発行されていた2月23日の朝鮮語新聞『東亜日報』や『朝鮮日報』、『毎日新報』はもちろん、日本語新聞『京城日報』や『朝鮮新聞』も一斉に報じた。
「アリラン物語」が初演されたのは、1936年9月22日から24日に開催された崔承喜の東京第3回公演である。 この作品は1937年に日本、朝鮮、満州で行われた「渡歐告別公演」でも継続的に上演された。 1937年2月9日付の『滿洲日日新聞』(7面)と2月19日の『朝鮮日報』(7面)も「アリランの旋律」を報じ、1937年9月27日から29日に開催された東京劇場公演のプログラムにも「アリランに寄与す」が収録されていた。

しかし、「アリラン」の初演はそれよりも先に行われる。 1935年10月22日、日比谷公会堂で開催された第2回東京公演で、崔承喜は「アリラン」を発表したが、当時は名前が異なっていた。 その時のタイトルは「三つのコリアンメロディ」だった。 この作品は3つの小品からなる組曲で、そのうち第2作が「民謡調」であった。 この「民謡調」の衣装は、1936年に「アリラン物語」というタイトルで発表された作品の衣装と完全に同じである。 『民謡調』のタイトルが『アリラン』に変わったことが分かる。
したがって、崔承喜の舞踊作品「アリラン」は、1935年の第3回東京公演で「民謠調」という題名で初演され、これが1937年に各地で開催された渡欧告別公演で「アリランの旋律」、「アリランに寄與す」、「アリラン物語」などの名で上演され、1938年の米州巡回公演で「アリラン」という題名でサンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークで発表されたのである。 (jc, 2025/11/30; 2026/3/31) ⓒ趙正熙
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